Tolkien Advent ゆきて帰りし物語 |
瀬田貞二氏は、児童文学というジャンルを深く掘り下げ切り拓いた人でした。 束人にはもちろん、『指輪物語』『ホビットの冒険』の翻訳者として、ほとんどの日本語でのトールキン読者がお世話になったと思います。 いろいろな方面に不勉強な私ですし、もうすでに多くの方々に語られているだろうし、周知のことであるとは思いますが、このアドヴェントの記念として綴ります。 (瀬田貞二さんを先生とよぶにはおこがましいし、呼び捨てもできませんので、あえて氏としました<(_ _)> 瀬田貞二氏は、大学では国文科、芭蕉を研究したといわれていますし、俳句誌『萬緑(ばんりょく)』が中村草田男氏によって創刊されたときの、初代編集長となりました。 (興味のある方は検索してみてください。) 瀬田氏にとって「ことば」を自在に選び、構成することは、楽しくやりがいのある仕事だったと思います。 さて、私たちにとって一番慣れ親しんでいる、あのタイトル、瀬田氏はなぜあの言葉を選んだのでしょうか。 The Hobbit,There and back again. これを『ホビットの冒険 ゆきて帰りし物語』としたはなぜだったのか。 There and back again は、そのまま訳すと「そこの再び」「往復で」また「とんぼ帰り」の意味に使うこともあるようです。 『ホビット~』の内容から、トールキンは There and back againを「往復」「行ってきたよ、帰ってきたよ」と使ったのだとわかります。 瀬田氏も、もちろん全体の流れから、このタイトルとしたのでしょう。 しかし、「ゆきて」「帰りし」ということばを選んだわけは、瀬田氏の考えていた児童文学のあり方や、物語の本質に根ざしている気がします。 まず、「面白い物語(民話、童話を含めて)では、主人公は必ず『行って』『帰って』くる」ということ。 この往還の法則は、主人公が自分のテリトリーから外へ出て再び戻ってくるということです。 トールキンももちろん、往還する物語、物語の王道として There and back again を副題にしたのでしょう。 往還する物語は、往還のなかに、時空間的捉え方をすることができます。 ビルボが、フロドが往還することで、物語のなかで空間(ホビット庄)には戻ってきますが、時間は戻りません。 ビルボもフロドも、変化をともなった時間のあと、同じ袋小路屋敷へへ戻ったとき、不変のようなホビット庄(実際は、ビルボもフロドも、同じ家には戻れませんでしたが)にあって、まったく違うホビットになっていました。 還は環でもある、時間によって壊されて新しい時へ踏み出すための環=輪(運命)でもあるのです。 スマウグが、指輪が、それぞれその時点での中つ国のウロボロス=壊されるべき輪(運命)であり、神話の繰り返しを破って、次の時空間へ移動する。 そして、もうひとつ。 瀬田氏が学生時代に研究したという松尾芭蕉の言葉があります。 「ゆきて帰るあじわひの心」。 意味は簡単に現代的にいうと、「俳句を作るときには、一つの題材をそのままに表現するのではなく、別の視点や切り口で表現しなくてはいけない」ということでした。 (これも興味がある方は検索してみてください。) 昭和48年に山本健吉氏はこう解釈しています。(『ホビット~』はすでに翻訳されていましたが。) 「俳句詩型が絶えざる往と還との原理によって支えられている」。 現在では、大輪靖宏氏がこのように解釈しています。 「行きと帰りというのは、そこに表現されたそれぞれの内容の方向性が同一でないということだろう。(略)その中に併存する二つの要素が、意味内容において、別々の方向性を持っているということは大切だ。二つのものが同一の方向性を有していれば、結局それは繰り返しに過ぎないのであって、言わんとすることの意味は強められるかも知れないが、意味の広がりは生じない。方向性の違う二つのものが響き合うからこそ、その間の空間にさまざまな意味が生まれ、その句の表現内容に奥行きが生じてくるのである。」 「句」を「物語」に置き換えてみると、どうでしょうか。 先に示した「環」と「還」、二つのものが同一の方向性しか持たなければ、それは繰り返しにすぎない。 前へ進むエネルギー、未来へとつづく希望は「輪」を壊して生まれてくる。 スマウグたる指輪たる「ウロボロス」を破り、ビルボはフロドはサムは、ふるさとへ戻り、再び旅立つ。 エルフの時代は終わるが、彼らもまたふるさとをめざす。 中つ国も変化する。変化は悲しみももたらすが、未来には喜びも約束されているに違いない。 こどもたちへ良い物語を良い未来をと願った瀬田氏が、There and back again を 「ゆきて帰りし物語」と名付けたことで、このサブタイトルには、トールキンが表したかった中つ国の神話的な長久な時空が内包されたのではないか、と考えるのです。 |
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by crann
| 2017-12-23 22:49
| luccicare・えるべれす!
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おひさしぶりで、ホームズです。 |
大変なおひさしぶりです。 近況報告もそろそろ、ですが、一言でいいますと「介護たいへん」です(^_^;) ですが一山は越えましたので、自分の生活、自分の生活基盤である「家」の 片づけを鋭意続行しております。 しかし精神的な自分のフォローを忘れているわけでは、ありません。 この数年のホームズのメジャー復帰(笑)に貢献している、イギリスBBC放送 製作ホームズパスティーシュの気鋭「SHERLOCK」、その最新スペシャル映画版 はしっかり、鑑賞しました。 まとめなくてはと思い、ブログに投下いたしますが、長くなりそうです(笑) とりあえずは、冒頭から。。。 大いにネタバレです! シャーロックスペシャル「忌まわしき花嫁」 |
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by crann
| 2016-03-26 12:19
| cinema・映画
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英文学への道。 |
慶應義塾大学の新入生向け公開講座(講演会)にいってきました。 1月には一般向け公開講座にも行っているので、今年は慶應づいているのかも。 さて、慶應といえば伊藤盡先生ですね、もうおわかりのことと思いますが、そうです、ホビットです。 ホビットとその作者トールキンをめぐる文献学的な話を、新入生むけにわかりやすくドアを開いて みせてくれる講座でした。 その最後の質疑応答が、講座全体をぎゅっと圧縮した内容でしたので、まとめてみました。 以下。。。 More |
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by crann
| 2014-04-26 23:41
| luccicare・えるべれす!
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風疹は重いよ。 |
おはようございます。 公私、またいろいろとありまして。。。 時間ができそうかなと思った年度末、先々週からなんとなく下降気味と思っていたら、 26日朝出勤して、同僚に「顔が赤いよ!」。 風疹のようでした。 そのまま診察うけて、自宅へ戻り、現在に至ります。 36℃後半からたぶん38℃越える体温をいったりきたり、発疹は29日にはおさまってきた のですが、関節炎が痛いのなんの。膝がまず痛くてしゃがめませんでした。 首の後ろのリンパ腺も、後頭部まで腫れて、枕にあたって痛いです。 今は、ロキソニンを飲んで、解熱と痛みの緩和で眠っています。 が、寝ていても、血行が悪くなると両手両足の手首足首から先が痺れたようになってきます。 起き上がる、立ち上がり歩く、それだけで「イッテテテ・・・」です。 今朝はメールチェックができましたが、とうとう年度末まで休んでしまいました。 明日まで休みをもらっていますが、出勤できるのかな?・・・ |
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by crann
| 2013-03-31 07:50
| exccetera・いろいろ
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白鳥の湖。 |
ホビットで復活したブログですが、ホビットだけじゃイカンと思いまして、最近みたバレエの舞台感想など。 キエフバレエ団公演「白鳥の湖」を見ました。 ひさしぶりの、ライブのバレエ舞台です。 白鳥の湖もいったい何年ぶり!? 音楽や構成、演出も松山バレエ団とかキーロフバレエ団とか以前見たのを詳しく記憶していないので、 どこがどう違うかは全然わかりませんでしたが・・ 衣装がすばらしく美しかったです。王子以外の。 何故に王子の衣装は「白タイツ」しかないのでしょうか?今回の衣装、中世風のゴージャスな宮廷衣装、各国の踊りのスイス風、スペイン風、コサック風、どれも美しくて素敵でした。 白鳥ももちろん美しいのですが、黒鳥のゴージャス加減がまたすばらしい。 チュチュの上に大きなクリスタルがとめてありました。 (今、気づきましたが、白鳥から黒鳥へ衣装を変えても重さを同じようにしないと、バランスがとりづらいですよね?片方がゴージャスなら、もうひとつもゴージャスにしないと、見栄えだけじゃないんでしょうね。) なのに、王子は変わらず白タイツ。。。 第一幕はまだジャケットがあるからいいけど、第二幕になると、身軽すぎて、他の衣装と比べても王子っぽくなく見えてしまいました。 席が前から二列目、右端とあまりいい席ではなかったので、遠めで中心から見たら、それほど王子が浮いて見えることは無いのかもしれませんが。。。 ロットバルトもいいダンサーでした。 黒鳥オディールを連れて大広間にあらわれたロットバルトのかっこいいこと! 今回は、王子の家族は女王(母)だけですが、ロットバルトが女王陛下の玉座に近寄り女王の手をとって挨拶して、そのあともずっと女王に侍って(笑)話しかけているのですが・・・ そこがどうにも、ロットバルトが女王を口説いているようにしか見えなくて(笑) 娘に王子、自分は女王を狙っているのか!親子で王国のっとりか! そういう話でも全然かまわないけど(笑)、時間が限られた舞台上の演出では、できませんよね。 ノベライズしたら、いろいろふくらませておもしろくできそうです。 スペインのカバリエに一人ものすごくかっこいいダンサーがいました。 一緒にいった友人とニ幕が終わった瞬間「あの!スペインのダンサー!」と同時に叫んでしまったくらい。 白鳥たちにもわりと大柄なダンサーが多く、中心に小さめ、周りへ長身のダンサーを配置しているのも面白いと思いました。 日本人から見て大柄だなと思うくらいですから、たぶん170cmありそうな白鳥さんです。 バレリーナは背が高いと不利とはいいますが、やはりそういう枷をはずしてもらいたいですよね。 音楽もウクライナ管弦楽団で、バレエにオケピがあるのが珍しいのか?オケピットを覗きにくる観客で、オケピは超人気者?状態でした。 指揮者はシャープな横顔がすてきなおじさまで、これまた眼福。 初めて指揮と踊りのアイコンタクトを見ましたが、それ以外にも、出のタイミング、動くタイミングなど、話しかけるふり(で本当に話している)や、扇で手招きなど、いろいろな合図があるらしいこともわかって、前から二列目を充分に楽しめました。 黒鳥の32回転と指揮者のタイミングがばっちりあった瞬間、指揮者がにやり♪と満足気に笑ったとき、ダンサーにだけでなく指揮者とオケにも拍手を贈りました。 さて、実はさんざんな王子(衣装)批評をしてしまいましたが(^^;)、王子がバレエ団の芸術監督だったりします。 http://www.koransha.com/ballet/kiev2012/pdf/cast20130113.pdf ダンサーたちのインタビュー画像もどうぞ♪ http://www.koransha.com/ballet/kiev2012/#filipieva *リンクがでないのでurlを直接貼っておきます。 舞台大道具に、城の紋章があったのですが、全景が見えず(苦笑)、でも百合紋章があったのですが。。。 いったいどこの国の設定なんでしょうねえ。 |
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by crann
| 2013-01-18 20:37
| musica・音楽
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緑龍館の看板。 |
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by crann
| 2013-01-16 14:11
| cinema・映画
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ホビット土産。 |
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by crann
| 2013-01-16 09:57
| cinema・映画
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冒険に遅刻決定【ネタバレ】 |
前ので熱く語りすぎたので、今度はさらっと。 ドワーフ宴会のあと、ビルボ・バギンズにいやがらせ(笑)しつつ、ドワーフの大変すばらしい家事能力が発現され、宴会の片付けは驚異的に終了する。 このときは、ドワーリンがヴィオラ(ヴィオール)を弾き、ボフールがホイッスル。 原作ではドワーフは全員楽器を持っていることになっているのだけれど、音楽を愛している流浪の民設定は、暢気で食べ放題が趣味のホビットとは大きな違い(笑) このあたりは、原作の雰囲気がうまく伝わる、いい場面が続く。 しかし、ビルボのストレスも最高潮、いったいなんで、ガンダルフはこんな「やつら」を我が家へ集めたんだ!?この理不尽加減は、「物語」の重要な鍵、ある種の「デウスエクスマキーナ」じゃないだろうか。 もちろん、背景にはガンダルフの深謀遠慮(には思えない、ただの直観、でもイスタリとしての直観なら許せるかな?)があるのだけれど、実はもっとすごい「運命」だったわけだし。 さらっとしようと思っていたけど、もうちょっと熱く語ってみておく。 More
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by crann
| 2013-01-15 17:39
| cinema・映画
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冒険に遅れる!【ネタバレ】 |
繰り返してしまうけれど、映画「ホビット」は、ピーター・ジャクソン監督というフィルターを通して表現された「中つ国」。 PJ監督の前作「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の全ての表現に、私は諸手をあげて賛成できるかといえば、いえない部分も多々あった。 しかし、PJ監督によって実体化された(されてないけどw)中つ国の風物に、心ゆさぶられるところがあった。 それを思い出すにつけ、今回のホビットも、「PJフィルターを通して」の表現のなかで、理解できる、または、評価できる、ことがいくつも発見できると思う。 そのうちの大きなひとつに、やはり、これはPJのホビットだ、ということだ。 残念ながら英語力の乏しい私にとって、原書のトールキン教授が自分の好みと趣味と能力を最大限に発揮して描いた「言葉」の壁は大きい。 トールキン教授の膨大な古典英語の知識、北欧やゲルマン、ケルトの知識を、原書の英語から読み解くことは不可能なので、まずは、翻訳というフィルターを通して『ホビットの冒険』(岩波書店/瀬田貞二訳)を楽しく読んだのだった。 日本人でトールキンが好きな人なら、ほぼ誰もが同じ本を読んでいるだろう、つまり皆が持つ「ホビット」とは、瀬田貞二のホビットの世界だ。 『ホビットの冒険』が岩波少年少女文庫から刊行されているくらいなので、瀬田貞二さんは、日本のこどものために楽しく翻訳されている。 同じ瀬田貞二訳でも『指輪物語』の重厚さとは一味も二味も違う。もちろん、それでいいのだ、ホビットはこどものための物語なのだから。 映画「ホビット」は、PJが先に「ロード・オブ・ザ・リング」を映画化し、彼の中つ国はすでに完成している。 「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビット」の間に大きな乖離が起きるはずもなく、あってはいけない。これはあたりまえだろう。 そこで映画「ホビット」は、原作(日本語訳としておく)の表現より、数段重厚にならざるを得なかった。 ここで、すでに映画「ホビット」は原作とは大きく離れていったと思う。 ひとつずつのデティールに、『指輪物語』とその『追補編』から読み解いた風味、中つ国の古い歴史、ビルボが未だ知りえないはずの暗黒との戦いが、薄紗のようにかかっている。一枚板の扉とおもっていたら、そこに壮大な物語が彫られていたと気づくような、感覚。 PJは、「中つ国」を、今回のホビットでもう少し色濃く表現しようとしているのかもしれない。 重厚さを膨らませた大きな違いの部分は、ドワーフの「憧れ」の部分である。 原作では、ただただひたすら、ドワーフたちは「失われた黄金」への欲求によって、また予言の成就によって、黄金奪還のために立ち上がる。 (このプロットは、まさにニーベルンゲンの指輪の主題でもある、黄金と小人。) 映画「ホビット」のドワーフは、まずは故郷喪失、王国の滅亡、一族離散につづく困窮の年月を過ごしてきた。 誇り高きドワーフ王家の末裔トーリン・オーケンシールドは、一族を安全に暮らせるよう導いた立派な指導者でもある。 が、彼のなかには、祖父と同じ黄金への欲求と同じくらいに強く、ドワーフの栄光復活への切望がうずまいている。 復讐心と誇り(トーリン役のアーミテイジもマクベスであると言及していた)というトーリンの性格付けが、「ホビット」を重厚化させている、と第一部では特に感じられた。 この動機付けが、さまざまな波紋を呼び起こしていくのだ。 13人の統領としてのゆるぎない尊敬の獲得もそうだが、トーリンと対することで「ホビットとしてのビルボ」の性格、性質、位置がはっきりしていく。 ほぼ原作どおりの進行でありながら、この重厚さによって、映画「ホビット」はやはりPJのものである。 さて、日本語吹替えで楽しめることのひとつに、「言葉遣い」がある。 トーリンの「貴様」は武士の武張ったよびかけであるし、アーケン石を「山の大御霊(おおみたま)」としたところが、私はとてもいいと思う。 (だいぶびっくりしたけどね、大御霊w) 実際、ドワーフ13人全員が腕に覚えがある戦士ではない、が信義(ちょっと黄金w)で固く団結していくところなんぞは、日本人の大好きな「忠臣蔵」じゃないですか?(笑) トーリンは大石内蔵助?(笑) 日本語吹替えは、情報量の多さも魅力だけれど、美文調の語り口で、より「重厚さ」を実感できる。 それにしても感想が尽きなくって、本当に冒険に遅れるね、これじゃ・・・
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by crann
| 2013-01-15 17:33
| cinema・映画
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中つ国へ、ふたたび!【ネタバレ】 |
懐かしい中つ国におかえり!で始まる、映画「ホビット」のプロローグ。 映画「ロード・オブ・ザ・リング」(邦題/原題The Lord of the Rings)でPJ監督が描いた「中つ国」Middle Earthに馴染んだ目には、とても懐かしく映る。 映画Lotr三部作に賛否両論、否が大勢をしめてしまったこともあった目にも、ホビット庄の緑の丘は懐かしく美しくリラックスして迎えることができた。 この感想は、ひさしぶりの指輪オタクとしてネタバレ全開だが、Lotrとも密接にかかわる映画「ホビット」のサウンドトラックについても並行して、自分のためにも記録しておく。 老ビルボは、Lotrのサー・イアン・ホルム。フロドもそのまま、イライジャ・ウッド。 「ホビット」はLotrの発端から60年前の物語であっても、現実の俳優たちには8年の歳月がたっているにも関わらず、みんな若くて生き生きとしている! Lotrで驚かされた、ニュージーランドWETAスタジオのCGI(笑)にはびっくりする。 ただし、ガンダルフのサー・イアン・マッケランはどうしも声が、サルマンのサー・クリストファー・リーの朗々たる響きも、老いが感じられてしまった。二人ともお年を召したなあ。。。 (そうそう、三人もサーが出ている映画ってのもすごいw) その点は、吹替え版はガンダルフもサルマンも、力あふれる魔法使いらしさなので、おすすめ。 老ビルボは、自分の冒険物語の導入を語りはじめる。 音楽はホビットでは、特にLotrから続く様々な動機やテーマを物語っている。 Lotrでのサントラ、指輪の仲間のテーマ、Rotkの旅の仲間の帰還でゆっくり乾杯するところの旋律に柔らかいトライアングルを使って谷間の国の在りし日の姿。 ドワーフのテーマが入り、エレボールの美麗さを。 災厄のおとずれの動機がおこる。 映像では谷間の国に高々とあがる凧が強風に煽られるところに、ドラムが凶事の前触れとなっている。 *この凧、竜、亀、翼竜?(プテラノドン)風と3つあるのだけれど、これって、PJの怪獣映画へのオマージュか もしれないなと思った。 竜=ゴジラ、亀=ガメラ、翼竜=キングギドラ(笑)。 姿はいっさい見えず巨大な災厄であるスマウグの爆裂炎が谷間とエレボールを一掃する。 *これも、ハリウッド版ゴジラが最初は全形を見せなかった演出に似ているかも。 トーリンは若々しく、力強く、由緒正しい高貴さがあってとてもいい。 ドワーフ女性(髭あり?)と噂できいていたけれど、谷間の国の市で人間男子に織物を見せているゴージャスな小さめ小太り女性たちがドワーフレディじゃないか? エレボール脱出のときも遠目ながら、ドレスの女性たちが走るのが見えたけれど、髭の有無がいまいち目視できず。 壮大な滅びの物語から、ホビット庄の緑の丸ドアの前で老ビルボは回想する、ある日こうしてパイプを楽しんでいたら突然ふってわいた冒険のことを… そこから、我ら(笑)がジョン(SHERLOCKのジョン・ワトソン役w)、マーティン・フリーマンの若きビルボが登場。イアン・ホルムとの流れがとてもいい。 ジョン(笑)ビルボは、老ビルボと同じような「田舎紳士」ふうの衣装がとてもしっくりし、若いくせにやたら分別くさい顔をしている。衣装のホビット穴に溶け込んでしまいそうな、自然な色合い。どこもかしこも、イギリス男子くさい(笑) ホビット庄のテーマ、コンサーニングホビットは、さらに軽快なリズムで楽しさを刻んでいる。 そこに不思議な人間の老人があらわれる。 ガンダルフの登場である。 とんがり帽子、少し煌いているマフラー。このマフラー、スカーフはLotrにはなかったものだ。 さんざんな問答になるところは、原作どおり。 夕食の準備をしているところへ、呼び鈴が鳴る。 ビルボの食卓には、塩入れ(富裕層の象徴)がある。さすがバギンズの旦那である。 が、塩をふった鱒のバタ焼き(だと思うけど)はビルボの口には入らず… まずドワーリンが訪れ、一番乗りの一番槍(笑)でドワーリンが平らげてしまう。 次はドワーリンの兄、バーリン。 体を半分向こうへむけていて、ドアがあくとこちらを向く、バーリンの登場はとてもいい。 ドワーリンとバーリンが兄弟仲良くパントリーを漁るところも、とても楽しい。 *この後、フィーリとキーリの、この映画では「美形」に入る若者ドワーフ兄弟が来るのだが、この二人はとて も礼儀正しい、が、ドワーリンには「ミスター」「殿」がつくけれど、バーリンにはつかない。 もしかしたら、バーリンは彼らの親代わり(代父とか名づけ親とか)なのかもしれないなと思ったり。 全員が集合して、ビルボのパントリーはすっからかんになってしまう。 ドワーフの楽しい合いの手にのって、エダムチーズらしき大玉チーズ×3、小さめトマト(ミニトマトとトマトの中間くらい、黄色いのも赤いのも。これが少し皺よっているところが、いかにも貯蔵庫のものらしい。)、ボンレスハム(これはスライスされてテーブル直置き!なぜボンレスかというと、楕円形だったからw)、鶏もも骨つきもボンブールが残飯片付けしたときにあった。じゃがいもの茹でたの、人参のゆでたの、グリンピースも見えたので、イギリスパブ飯の豪快版である。 ただし、ドワーフは(ドワーリンとバーリン)、ブルーチーズは苦手のようでポイしていた。。。 そういえば、パントリーには玉葱やリーキらしきものもぶら下がっていたのに、最後はすっからかんだったので、ドワーフはなんと効率的に宴会パブ飯を作れる民族よ、と感嘆するわけだ。 (続くw)
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by crann
| 2013-01-10 21:04
| cinema・映画
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