知の冒険。 |
1年分以上、書きかけ記事がたまっております(爆) 書きたいことや「話したい」ことはたくさんあるのですが、手と頭と目、年末からはPCがおいつかず、放りっぱなしでした。 ごめんなさい。(誰ともなく、自省もこめて・・・) ちょっとずつ、完成させてあげていきます。(宣言すればちょっとは前進?) まずは、昨年、2007年9月の初め、台風上陸の日。 ご縁があって、ワールドコン2007の実行委員として来日していたH氏を東京下町散歩にお誘いしました。 H氏はアメリカ在住のSFファンダム(日本でいうところの同人ですね)の重鎮です。 世界SF大会、通称ワールドコンは、世界中のSFファンが集まるお祭ですが、日本の巨大同人誌即売会とは大きく違います。 SFの「S」と「F」に関わることすべてを楽しむために、さまざまなイベントが密度濃く詰まったお祭なのです。 モーターショーでは自動車に関わる分野の企業や研究団体がこぞってその成果を発表しますが、それに似ているかも。 今回もロボット工学や遺伝子工学などから、ファンタジイのネタともいえるヨーロッパ中世の音楽や舞踊、近未来社会への警鐘を含んだ文化論、SFというジャンルが作り上げ、または吸収した多種多様な文化の交流があったのでした。 運営する実行委員会には、前年度開催地から引き継いだスタッフに加え、ワールドコンを支えてきた縁の下の力持ちも多く来日してくださっていたのでした。 H氏はそのお一人。 たまたま最終日、閉会式のあと、名残りを惜しんで握手をさせていただき、お話しているうちに・・・ 東京下町文学散歩をするならご案内しますよ、となりました。 私の貧弱な英語力ではとても通訳なんてできないので、日本の実行委員会の皆様にお声をかけてご一緒してくださる方を募っていただいたり、なんだか話がどんどんすすんで、文学散歩開催となったわけです。 コースは清澄庭園、深川江戸資料館、芭蕉記念館を予定し、昼食は深川めし。 まずは清澄庭園の歴史やら特徴やらを説明しながら、散策。 H氏は、haiku in engilishの方だったのです。 何かを説明すると、haiku modeに入ることしばしば。 H氏のすごいところは、週刊で(!)ペーパースタイルの同人誌を発行していること。それもウン十年も続いているのです。 そのタイトル下に、彼のhaikuが出ているときがあります。 記念にhaikuが出ている号をもらいました。 この文学散歩に参加した人は、彼からspecialなお土産をいただきました。 すでに亡くなった方ですが、アメリカのカートゥーンというスタイルのイラストレーター直筆のイラストを一点ずつ。 そのお土産にいただいたイラストカードはすべて、H氏と亡くなった友人のイラストレーターとで「一晩にいくつイラストを描けるか!と挑戦したときのものだそうです。 なんと3000枚近くのイラストを一晩で!!描いたそうな。 その企画の由来は、「西鶴の万句興行」。 井原西鶴が大阪でうった興行=イベント、「一晩に万の発句(俳句)をするぞ」を踏襲してみたんだそうです。 仕事柄文学の知識はふつうの人よりはあるほうですが、専門じゃないし、たまたま万句興行をしっていたのが運のつきでしょうか・・・ 「わたしは源氏が好きなんです」 と、H氏がバッグから取り出したのは「GENJI」つまり「源氏物語」の完全英訳ペーパーバック版だったのでした! 古い版だけど、翻訳としてはこれが一番いい、とおっしゃるということは、他の翻訳本も読破なさったのですよね。尊敬・・・ と、H氏は日本の古典文学にとっても造詣が深いのですが、資料を説明していると、外国人ならではの質問をなさるのですが、それがまた鋭いところをついているんですね。 書道には書体がいくつあるのか。 筆はどれくらい保つものか、旅先で補充できるのか。 そして、一番すごい質問はこれ。 「日本人の書き言葉と話言葉が分かれたのはなぜ、そして、何時か」 「なぜ現代日本人は古文、つまり仮名と漢文が読めなくなったのか」 大問題ですよね。 展示ガラスケースの上に、折り畳み傘とパンフレット、源氏ペーパーバックを並べて、 源氏ペーパーバック=平安時代 折り畳み傘=元禄時代、芭蕉の時代 パンフレット=現代 として、この間、いったいどのように日本語が変化していったのかを、1時間くらい論議しました。 英語の場合現代人でもシェークスピアが読める、日本語は古文と現代語のどこが違うのか。 明治の口語体から現代日本語が始まったわけですが、それ以前、源氏以前の日本語もかなり違っていたはず、というところから最初は5人くらいで説明に取り組んだのですが、最後は2人になってしまいました(爆) 私も初めて真剣に?この格差を考えました。 なけなしの英語力以前に、歴史的言語学的大問題への研究にはまってしまいました。 しかし、台風もどんどん近づいているので、3時すぎにお開きに。 芭蕉記念館に約2時間、そのうち1時間はこの大問題への論議に費やされたわけです。 私の貧弱な脳は、ふだん使わないスイッチをむりやり入れたために、フル回転から空回りし、翌日は知恵熱が出ました(爆) 筆の使い方なんかは、ご存じなかったので驚いていらっしゃいましたけど、それくらいしか完璧な説明ができなかった気がします・・・大反省。 世界にはすごい人がいるもんだ!と実感した濃い台風上陸の日のことでした。 |
by crann
| 2008-04-16 23:19
| gioco・ことば遊び
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